私は一日体験を終え、店長である佐倉さん、ナンバー1の羽佐間さんがいる「ホストクラブZ」でお世話になることとなった。
レギュラーでホストデビュー
まだ不安も多かったので、アルバイトで働く事も考えたが、実家の遠い私にとって通いは困難な為、名古屋の新栄にある寮に住み、レギュラーで働く事にした。
店長がいったように(3ヶ月で駄目だったら実家に帰ればいいや…)
なんて甘い考えを頭の片隅に置きながら、私のホスト生活が始まったのである。
当時の私の一日のスケジュールは下記のような感じだった。
今思えばよくやっていたと思う…。
16:00~17:00 起床→女性に連絡→準備
17:00~20:00 キャッチ(街を歩く女性に声を掛け、連絡先を聞く行為)
20:00~22:00 寮に帰宅→女性に連絡→準備
22:00~08:00 出勤→掃除などの開店準備→女性に連絡→営業→閉店→営業後ミーティング→片付け
08:30~09:00 寮に帰宅→就寝
店内での新人の仕事
ホストクラブの店内での雑務はすべて下っ端の仕事だ。
売上がない新人達は皆ここからスタートする。
お客様が来店したら、下っ端は即座に席に向かう。
片膝をつき、「いらっしゃいませ」と声を掛け、おしぼりを渡す。
次いで、飲み物(ファーストドリンク)を確認し、急いで席まで運ぶ。
そしてお客様のお酒を作り、目の前に提供する。
※この提供スピードが遅いと先輩達にきつく怒られる。
そしてその席につかせて頂く。
その際はお客様に「私も頂いてもよろしいでしょうか。」と必ず確認する。
乾杯の際は、必ず両手でお客様のグラスよりも下で乾杯し「いただきます。」を告げてから頂かなくてはならない。
接客のためのテーブルマナー
ホストクラブでは、テーブルマナーとして下記の事項を遵守しなければならない。
これは接客のほんの基本的な事項である。
- テーブルの上は常にきれいに配置する
- お客様のドリンクが残りが少なくなったらすぐに作る
- お客様のグラスが結露してきたら、拭く
- お客様がタバコを吸おうとしたら火を付ける
- お客様の灰皿が3本溜まったら、新しい灰皿に替える
- 先輩たちのお酒を作る
※勿論、ここでもスピードが重視され、遅いと(ときには厳しく)指摘される。
さらには別の席から
「(藤茂)真太郎~これ持ってきて~」と呼ばれたり、洗い物を頼まれたり、トイレ掃除を頼まれたり…
落ち着いてヘルプなんてさせてもらえない。
雑用が落ち着いたと思いきや、飲み上げ(単価の低いお酒を量を飲んで上げる事)の席につくように指示を受け、濃いお酒をひたすら飲み続ける。
下っ端は飲んでなんぼ。
下っ端はとにかく飲むしかないのだ。
ひたすらお酒を飲む→雑務。この繰り返しの毎日が続く。
新人ながら一番驚いた事
このころ、あることに大変驚いた。
私をこの店に招き入れてくれた店長の佐倉さんの事だ。
当時、彼は下っぱのホストを押し上げる為に、既に現役を引退していた。
※現役引退とはどれだけ売上を上げようとナンバーには反映されない事をいう。
なんと彼は…一滴も酒を飲まず常に売上を上げ続けていたのだ。
(正しく言うと飲めないのだが…)
当時、私の中では「酒を飲めてこそホスト」と思っていた。
しかし佐倉さんというホストはそうではないのだ。
佐倉さんは私にこういった。
ホストって仕事はなぁ、別に酒を飲むことじゃねぇんだよ。
そんなもんはヘルプが飲めばいいんだ。。
ホストの仕事は客呼んで、売上上げる事だからな。その辺、勘違いするんじゃねぇぞ、真太郎。
下っ端が嫌なら、自力で上まで上がってこい。
か…かっこいい
佐倉さんがいうには、ホスト本人が酒を飲まなくてもお客様に満足していただける接客ができれば、そんなものは不要だというのだ。
根本的に、「夜の仕事=飲酒の必要性」と考えていた私は、大きなショックを受けたことを思い出す。
口数は少ないけど、男としてあるべき姿を教えてくれる佐倉さん。
徐々に私は彼の魅力に段々と惹かれていき、ついていくこととなるのである。
つづく