今回から、私の名古屋ホストクラブでの半生を綴っていきたいと思う。
最初にホストになったのは確か、2014年頃だったか。
私がはじめてホストクラブに入店した名古屋のお店の話。
ホストという未知の仕事に興味を持ち始めた私は、知人の紹介でとあるホストクラブグループの代表を紹介してもらった。ホストの採用というのはなんとなく審査が厳しいようなイメージだったのだが、いきなり一日体験をさせてもらうことになった。
一日体験とは、今でもある制度だが、ホストとして正式に入店する訳ではなく、1日(あるいは数日間)職業体験的にお試しで店で働いてみるという制度である。
待ち合わせはオンチッチ前
当時の栄には、「ドン・キホーテ」も「サンシャインサカエ」もなかった。
待ち合わせでよく使われていたのは、「ドン・キホーテ」が建っている場所にあった「オンチッチ」というゲームセンターか、栄の広場であった。
栄広場には、キムタクの大きい看板があって、「タク前」なんて呼ばれていた。
当時は、その辺りで待ち合わせしている若者が多かったように記憶している。
当日、私はオンチッチの前に深夜0時に呼び出されていた。
どんな格好で来て良いかもわからなかったので、ジーパンにスウェットかなにかのだらしない格好で行ってしまったような記憶がある。今思えば、ホストという職業を、いや人生そのものを軽く考えていたとしかいいようがない。何とも恥ずかしいことである。
現在は、迷惑防止条例などで路上での客引きやキャッチが規制されているのだが、当時はそういった規制がゆるく、路上で数多くのスーツをきたホストがキャッチをしており、女の子もたくさん溢れていた。
田舎者だった私は、普段なかなか触れることのない光景を目の当たりにして、不安と緊張に押し潰されそになった…。
先程から、手汗・背中の汗が止まらない。まだ何も始まっていないのに…。
待ち合わせ場所に訪れたのは…
そして深夜0時。
携帯電話に着信、出る…
「もしもし?オンチッチの前に着いたけど、藤茂くんどこにいる??」
当方の服装を伝えると目の前に停車していたなんとも威圧感のある真っ白な外車から降りてくる高身長の強面の男性がいるではないか…
龍二:「君が藤茂くんか!よろしくな!とりあえず車乗って!」
この先輩、龍二さんというらしい。知人をつたって紹介してもらった人で、今日は私のために迎えにきてくれたのだ。
ただし、純白の外車、リュウジさん、その組み合わせの最悪さといったら…。
一瞬にして自分がここに来たこと、いや来てしまったことを後悔した。
人生の選択肢を間違えてしまったような気がした。
(このまま拐われたらどうしよう…。無事に帰れるだろうか…。)
私はそんなことを考えながら恐る恐る乗車した。
後悔…、後悔…、後悔…っ!
車での移動中、何度も何度もこの言葉が脳裏をよぎる。
だが当然…断ることなんてとても出来ない、
もう、逃げられないのだ。
龍二さんとなにか話したはずだが、全く覚えていない。
頭の中が真っ白になるという言葉があるが、まさにこのときがそうだった。
田舎から出てきた世間知らずの少年が、絵に書いたような強面の龍二さんに、イカつい高級外車に乗せられて、
夜の街を走っている。
考える間もなく店舗まわり
その後、グループのホストクラブ何店舗かを回り、私が在籍する店を決めることとなった。
無事に店舗が決まり、初出勤の日程も決まった。
龍二さんと合流してからのほんの数時間で人生の方向が大きく変わった。
運命。
そう、これが運命というものだったのかもしれない。
こうして、私の名古屋での長いホスト人生が幕をあけるのである。
つづく